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結局その日は……分刻み、いや秒刻みの殺人的なスケジュールをこなすハメになり
しかも、移動する俺の周りには…廉が用意した実に男臭いSP達がピッタリ張り付いていて
逃げ出すことはおろか、杏に電話することさえも許されない状況にあった。
そんなこんなでむさ苦しい1日を過ごし、残るはレセプションパーティーをこなすのみとなった。
時刻は18時を回ったところ
「ふぅ……」
SPの取り巻きも無くなり、廉も秘書との打ち合わせで別室。
………杏もそろそろ夏祭りに向かった頃だろうか。
悶々とした思考を抱きながら俺は1人自社ビルの社長室で、迎えの車が手配されるのを待っていた。
しかし……杏に電話する絶好のチャンスでもあった。
「携帯……携帯っと」
スーツの内ポケットに手を伸ばす。
ん?
俺はありとあらゆるポケットの中を調べる………が。
「…………ない」
どこかに落としたのだろうか、携帯が見当たらないのだ。
慌ててデスクの引き出しを片っ端から開けてみる。
それでも一向に見つからない。
「やべえ……どっかに落としてきたか……?」
呆然としているところへ
コンコンッ
不意に社長室のドアがノックされた。
「どうぞ」
平静を装い、迎え入れようとするが
入ってきたのは……してやったり顔の廉。
「竜、探してんのはコレ?」
こともあろうか廉は本来俺が持つべきハズの携帯をブラブラとぶら下げながら入ってきた。
「廉……てめぇ」
俺の怒りは直ぐさま沸点にまで上昇する。
「おっと……そんな怖い顔しなさんなって!大事なお客様をお連れしてきてるんだから……」
そう言うと廉は再びドアに向かって歩き出し、部屋の外にいるであろう人物に声をかけていた。
「大事な客って誰だよ……」
正直そんな紳士に客を招き入れる気分でも無かった俺は、踏ん反り返った状態で椅子に腰掛けていた。
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