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てんやわんやの夏祭りも終盤を迎え、いよいよ花火大会に移るらしい。
時期的にどこよりも早い花火のようで、こちらを楽しみに来ている客が多いとの杏情報だ。
「私、とっておきの場所知ってるから」
そう言って俺の手を取り、杏は人の流れとはおおよそ反対方向に向かって歩き始めた。
「あ?どこ行くんだよ!?」
「昼間のうちにね、コタローとリサーチしといたんだ」
「…………」
杏のその嬉しそうな表情に俺の胸も締め付けられそうなくらいだ。
俺のために
そんなことまで……。
「って……学校ぉ!?」
「うん、屋上からなら花火がよく見えそうだったからさ」
そう俺達が来たのは……杏の高校
俺も去年までは一緒に通ってたんだよなぁ。
しかし
「夜の学校って……怖い」
予想を超える杏の密着度に俺の理性も吹き飛ぶ勢いだ。
「何だよ?お前がリサーチしたんだろ?」
「うん……でも昼間だったしぃ」
「………ったくぅ」
何て言いながらも俺の胸は躍っていた。
当然だろ!?
暗闇に2人きり、しかも浴衣姿の最愛の女が俺の腕にピッタリ張り付いてるんだぞ!?
こんな旨そうなシチュエーションで欲情しない奴がいるなら……連絡を寄越しやがれ!ってんだ。
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