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非常灯だけが光る校舎の中を杏と2人静かに歩く。
外では既に花火が始まったのか、ドーンといった爆音が鳴り響いていた。
その音に杏は時々驚き、俺の腕を掴んだその手に一層の力がこもる。
「何か……あの嵐の夜を思い出すよな」
「え?」
「ほら……PicCyberに狙われて、一時的にお前が自分の家に戻った時だよ」
「あぁ、あの時ね」
杏もようやく思い出したのか懐かしそうに笑ってみせた。
「あの時はホントに怖かった。でも竜が来てくれたから……私すごく嬉しかったんだ」
「………杏」
珍しく可愛いことを言ってくる杏を俺は思いっきり抱き寄せた。
「ばかっ……んな可愛いこと、こんな場所で言うな。理性効かなくなるだろ?」
「え?え?」
込み上げる激情を必死に抑えながらも、慌てふためく杏の頭を俺は余裕ぶって優しく撫でる。
「………嘘だよ。それにお楽しみは後からってことで」
「え………」
呆然とする杏の頬に軽いkissを落とし、もう一度力強く引き寄せる。
怯えるお前をこうやって抱きしめ
俺は……俺の腕の中で安堵の笑みを浮かべるお前をずっと見つめていたい。
いつまでも、いつまでも。
ガラにもなく、そんなことを不意に思う。
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