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しかし。
悪いことを企めば、必ず罰が与えられるのか
「あれっ!?2人とも屋上行かないの?」
何やら階段下の暗闇から声が聞こえてきた。
「……………!!」
「あれっ!?この声って
…………廉さん!?」
気付かなくていいのに……杏が先に気付いてしまった。
そうこうしているうちに、ビールを買ってきたのか……腕にコンビニの袋を抱えた廉が屈託のない笑顔で階段を上がってきた。
「何なに!?2人して抜け出すつもりだったの?」
「え?抜け出すも何も……先客がいるみた」
「あぁ!上にいた連中って、お前らだったのか!?」
杏の言葉を慌てて遮り、俺は声を大にして叫んだ。
………少し白々しかったか?と思いつつも。
廉はそんな俺をしばし冷たい視線で眺めていたが
「え!?先客って廉さん達……ってことは他に誰がいるんですか?」
そんな廉とは対照的に嬉々とした様子で問い掛ける杏。
「え?あ、あぁ。そりゃもちろん孝太郎くんもいるし、姫乃さんと拓馬くんも来てるよ」
「わぁ!楽しそ~!!」
そう言うが早いが……杏は俺の腕を振りほどき、サッサと屋上に向かって駆け上がって行ってしまった。
「……………」
おいおい。
彼氏とのLOVEな時間より仲間とのLikeな時間を選ぶんだな、お前は……。
愕然としている俺の肩に廉の手が置かれる。
「………せっかく2人だけの時間だったのに、残念だったね?」
「お、お前が言うなっ!」
肩に置かれた手を思いっきり振りほどこうとした、次の瞬間には………危険を察知したのか廉は慌てて、その手を退かした。
「さ、さ!早くぅ!花火が終わっちゃうよぉ」
杏を真似た言い方をしながら逃げるようにして、廉は階段を駆け上がっていく。
「………………………」
何だかもう怒る気も失せ、俺はその場に崩れ落ちるようにしてしゃがみ込んだ。
俺の杏……浴衣姿が眩しい俺の彼女との
楽しくなるハズだった2人だけの夏祭りの時間を
返しやがれっ!チクショー!!
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