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竜は普段のスーツ姿からは想像も出来ないような格好をしていた。
麻の白っぽいシャツにカーゴパンツ、足元はサンダル、眼鏡も少し遊び心を取り入れたようなデザインで、何より頭に乗せられたカンカン帽……。
竜なりに考え考え尽くされた変装のつもりなのだろうが………ごめん!私のツボにハマった。
「海の家にいる怪しいオッサンみたい」
私は竜から隠れるよう背中を向け笑いを堪えていた。
でも………。
『お兄さん、カッコイイ。良かったら一緒にお茶でもどうですか?』
振り向くと2、3人の可愛い女の子に竜は声を掛けられていた。
いや、よくよく周りを見渡すと
彼女達だけではなく、駅前広場に集まっている殆どの女子が竜の姿をウットリと見つめているようだった。
「………うそ。すごっ」
その様子からして『二階堂竜』ということがバレているワケではなさそうで、ただ単純に¨カッコイイ¨と称賛されているようだった。
それはそれで……何か面白くないと思ってしまう了見狭く醜い私。
でも……そんな私よりもっと酷いのは
『ねぇねぇ、お兄さん。もうここで20分も1人で待ってるじゃないですか』
『そうですよ!待ってる人が来ないなら私達と一緒にお茶しましょうよ』
「……………」
『ねぇ!お兄さんってば』
女の子達の必死なお誘いにも面倒臭さそうにシカトするばかりの竜。
一言『スミマセン。連れを待っているんで』ぐらい言えないのか!?
チヤホヤされるのも見ていて腹立たしく思うのだが
それ以上にシカトを決め込んでる竜にも無性に腹が立ってきた。
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