恩返し

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「あ、ねぇ!そんなことより行きたい場所あるんだけど」 「………そんなことより?」 竜は怪訝そうな視線でたっぷりと私を睨みつける。 「ほ、ほら!せっかくのデートなんだし楽しもうよ、ね?」 私にしては珍しく自分から竜の腕にしがみついた。 すると……竜もまんざらでない様子で視線を宙へ逸らし 「まぁ……そうだな」 と、照れ臭そうに笑った。 そんな竜を見ていると、何故だかこっちまで照れてきてしまう。 だから突拍子もない話題を振り掛けてしまう。 「そういえば、竜モッテモテだったねぇ」 「あん?」 「だって逆ナンなんてされちゃってさ?」 別にヤキモチとかではないけど… いや、やっぱりヤキモチなのかな 竜がモテるってことは重々承知はしているんだけど いざ目の前で自分の彼氏がナンパされているのは……正直、心中穏やかではなかった。 私って案外、嫉妬深いんだぁ。 自分でも気づかなかった意外な一面を知る。 「杏、何ボーッとしてんだよ?」 「へ?」 「へ?じゃねぇよ。今の俺の言葉聞いて無かったのか?」 「え……あ、なに?」 ヤバい、自分の世界にトリップしてて聞いてなかった。 私は申し訳なさそうに頭をポリポリとかいた。 「ち……しょうがねぇなぁ」 竜は面倒臭さそうに1つ大きな溜め息をつくと いきなり私の腰に手を回してきた。 「え!?キャッ……」 驚く間もなく竜の唇が私の耳元をくすぐる。 「俺はお前以外の女に全く興味はねぇんだよ」
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