251人が本棚に入れています
本棚に追加
「別に、取って食ったりしないから、入って来いよ。お酒の匂い、すごいぜ。」
俊作にそう言われて、桃子は自分の体の匂いを嗅いだ。
その匂いで、また酔いそうだった。
「バスタオル、置いてあるから。」
桃子も会社での雰囲気が違うのかも知れないが、俊作も心なしか雰囲気が違うように感じた。
なんて表現していいかわからないが、そう、なんだかちょっぴり、優しい気がした。
「ありがとうございます。」
桃子は、言われた通りシャワーを浴びた。
お酒で気持ち悪かったが、シャワーを浴びて、少しすっきりした。
だが、一つ問題があった。
桃子はお風呂の後、同じパンツを履けない女だった。
どうしよう・・・
運良くスカートだったので、桃子はパンツを履かずに過ごす事にした。
お風呂から上がると、俊作がジーパンに着替えていた。
「おい、コンビニ行って来るけど、何か欲しいものあるか?」
そう言われて、桃子はコンビニで前に、パンツが売っていたことを思い出した。
「あ、あの私も行きます。」
そう言うと、俊作の運転する車に乗り、コンビニまで向った。
「陣川、今日の休み何か予定ある?」
男の人からそんな事を聞かれたのは、生まれて初めてだった。
桃子は一瞬戸惑いながらも、変わっていく自分を感じた。
「予定はないです。」
桃子がそう答えると、俊作は嬉しそうに微笑んだ。
「じゃ、映画でも行かない?」
男の人から、映画に誘われるなんて、人生初の快挙だ。
桃子は、たったの1日で、シンデレラになった気分だった。
人生が輝いている気がした。
「はい。」
恥ずかしそうに、そう答えるのがやっとだった。
もうかれこれ3年は、俊作の下で働いている。
その間、一度もお酒に誘われたりした事もない。
仕事の合間に、会話をした事もない。
いつも、仕事を頼まれる時や、伝言がある時だけだった。
最初のコメントを投稿しよう!