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いつものように、満員電車に乗り込む。
昨日の出来事以外は、何も変わらない日常。
だけど、俊作に会うのが楽しみだった。
そして、俊作を見かけると、桃子は満面の笑みで、挨拶をした。
「おはようございます。」
しかし、桃子の予想通りにはいかなかったのだ。
俊作はいつもと変わらない様子で、桃子に接した。
「おはよう。」
昨日は、あれだけ優しくて、色々話してくれたのに・・・
桃子は一瞬にして、心が折れそうだった。
仕事が始まっても、用件以外は、何も言ってくれない。
俊作の事が気になり、何度も目で追うが、視線が合う事は一度もなかった。
昨日のことは、やっぱり夢だったのだろうか。
やっぱり、母の言うように、化粧をしたり、お洒落をしたりしなくても、自分をいいと言ってくれる人を、探すべきなのだろうか。
桃子は、時間が経つにつれて、いつもの桃子に戻りつつあった。
テキパキと雑用をこなし、言われた通りに、会議室へおいしいお茶を運んだ。
何も言わず、機械通りの行動をする。
夕方頃に、社長に呼ばれて、経理部の掃除の指導をしろと言われた。
経理部で、汗まみれになり、掃除のお手伝いをする。
結局、その日は、朝の挨拶で俊作に微笑んだだけで、その後は一度も笑っていない。
人生はそんなものなのかも知れない。
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