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会話もないまま1週間が過ぎ、平凡な日常に逆戻りをしてしまった。
桃子は、あの日が忘れられない。
平凡な日常を大きく揺るがした日。
お酒を飲んで、俊作の家に泊まり、それから翌日は映画に行った日。
普通の人なら有り得るかも知れない。
だけど、桃子には非日常的な、奇跡だった。
また、お洒落をして、ショットバーに行こう。
そうすれば、また出会いが待っているかも知れない。
そう思い、会社が終わると足早に、ショットバーに向った。
履きなれないヒールで、足の皮が剥けても、それでも必死でその靴を履き続けた。
ショットバーについて、カクテルを飲みながら、男に声を掛けられる事を待った。
だが、誰にも声を掛けられないまま、どんどん自己嫌悪に陥った。
母の言うとおり、冒険なんて、しなければよかった。
あんな奇跡が起きたから、勘違いしてしまったのだ。
桃子の人生は、お決まりの教科書で十分なのかも知れない。
そう思い、自棄酒のようにカクテルを飲み続けた。
次第に思考が停止して、酔いが回る中、世界が真っ暗になった。
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