第一羽

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朝の満員電車に揺られながら、会社に向う。 何もない平凡な人生。 私は決められたレールの上を、電車を走らせるように、人生を走り続けている。 決して主役にはなれない人生。 でも、不平不満はない。 母によく言われていた言葉は、世の中を不公平だと思う人間は、努力が足りない人間だ。 その言葉が、私を負け惜しみの言えない人間にした。 母は立派な人だった。 大人が子供を叱るのは、子供に自分と同じ過ちを犯して欲しくないからだと、耳にたこが出来るほど聞かされてきた。 私は、自分の人生が、平凡で、他人からすると、くだらないと言われても、子供の頃に染み付いた生き方を、変えることは出来なかった。 そんな立派な母は、もうこの世にはいない。 だから、少し冒険がしたくなっていた。 だけど、いきなり飛び出すのは、怖かった。 私は、燃え上がるような恋がしてみたい。 スリリングな恋に憧れる。 平凡で、平坦な人生は、幸せかも知れない。 だけど、時々切なくなる。 このまま、教科書通り生きていてもいいのかと。
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