第一羽

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満員電車を降りて、会社に向う。 かかとの高いヒールは、健康に悪いと、母が言っていた。 だから私は、今でも忠実にその教えを守っている。 ヒールは5センチまで。 爪先は、とがったものは駄目。 足の形に合ったものを選びに行き、母とオーダーメイドしたヒールの靴を、ずっと履き続けている。 私の人生に、冒険という文字はない。 だけど、もう、私を縛っている呪縛はないのだ。 そう思うと、急に私は飛び出したくなったのだ。 籠の中で、飛べない鳥のように、雁字搦めの人生から抜け出したかった。
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