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「陣川さん、おはようございます。」
後ろの方から、桃子を呼ぶ後輩の真美の声がした。
「竹内さん、おはよう。」
真美は、桃子よりも2つ年下の後輩だが、男にモテモテだ。
真美はきっと、ドラマでいうなら主人公だろう。
桃子はそんなくだらない事を思いながら、真美の話を聞いていた。
桃子は話し上手ではないが、よく聞き上手だと言われる。
それは、母の教えでもあったからだ。
話が下手なら、せめて聞き上手になりなさい。
それも口癖のように、聞かされてきたのだ。
「昨日、合コンで知り合ったばかりの男がホテルに誘って来たんですよ、信じられます?会ったばっかりですよ!失礼しちゃいますよね、先輩?」
桃子はうんとも、いいえとも言わず、ただニコニコと真美の話を聞いていた。
それは、相手の話をちゃんと聞いていますよと、伝える手段だ。
桃子は処女だ。
25歳にもなって、処女はおかしいだろうか。
母は、結婚したいと思った相手以外は、女は簡単に股を開いてはいけないと言っていた。
桃子は、それを信じて疑わなかった。
だけど、やっぱり興味はある。
どんなものか、経験したいと思っている。
職場に着くと、真美はすぐに別の人とも、昨日の話しをするのだ。
それを見て、桃子はまた母の言葉を思い出した。
人にベラベラ自分の恥を晒すな。
母の教えは絶対だった。
だけど最近は、少し違う。
鳥のように自由な真美。
その姿に憧れる。
平凡で、平坦な人生には、もう飽き飽きしている。
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