第一羽

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桃子のデスクは、社長も関心するほど、整理整頓されていた。 机の中も、どこに何があるのかしっかりとわかるようになっている。 それも、母の教えだった。 部屋を片付けられない女は、だらしがない女。 汚したトイレを洗わない女は、男にだらしがない。 そんな風に、頭に叩き込まれてきたのだ。 「陣川さん、今日の会議の資料をまとめてくれますか?」 係長の、平野 俊作(27)は、会議の資料をいつも桃子に頼むのだ。 それは、誰よりも正確にやり遂げる桃子に、絶大な信頼を置いているからだ。 だけど、それはあくまで雑用。 結局、どんなにしっかり資料をクリップや、ホッチキスでまとめても、大きな仕事をするのは、決まって別の人。 だけど、それを不公平だと思ってはいけない。 人それぞれ、役割というものがあって、その能力以上をしようとするのは、ただの愚か者だと、母から散々言われて来たのだ。 桃子は、コピー機も信用しない。 だから、印刷が終わった後に、きちんと枚数があるのか確認する。 時々、白紙などが出てくる事もある。 そんな時は、白紙を取り除き、きちんと同じ枚数にするのだった。 世間では、それを潔癖症と言うのだろうか。 どちらにしても、桃子は今、人生が退屈すぎて仕方がない。
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