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桃子は、目の前が真っ暗だった。
智代が厳しかったのは、桃子が自分の子供じゃなかったからだったんだ。
そんな事、信じたくはなかった。
悲しくなればなるほど、俊作の顔が頭に浮かんだ。
桃子は急いで、俊作の待つ家に向かった。
玄関を開けて、出迎えてくれた俊作に抱きついた。
「どうしたんだよ、桃子。何かあったのか?」
桃子は、俊作の温かい腕の中で、泣き続けた。
きっと、俊作がいなかったら、桃子は立ち直れなかっただろう。
桃子は、智代の話や、今の状況を話した。
俊作は何も言わずに、桃子を抱きしめてくれた。
桃子が13歳の頃、一度佳代が桃子を引き取りたいとやって来たが、智代は、玄関先で佳代を打った。
「お前みたいな、娼婦に桃子は渡さない!」
それが、智代の言葉だった。
佳代は、智代のために、桃子を産んだのに、ひどい仕打ちだった。
そしてそれ以上は執りついてももらえなかったのだ。
あの時、佳代の子供になっていれば、桃子はもっと自由に生きていたのかも知れない。
本当に、智代はひどい女だ。
桃子は、そう思った。
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