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バーに入ると、桃子は入った途端にバーを出た。
それは、そのバーには自分は不釣合いな格好をしていたからだ。
やっぱり、こんな地味な服や、髪型じゃ駄目だ。
桃子はその日は、バーに入るのを諦めた。
でも、このままバーに入るのを先延ばししていたら、きっと人生が何も変わらない気がした。
その日は、バーに入るのはやめたが、美容室に行き、髪の毛を少し茶色に染め、ウェーブを掛けた。
会社には、ばれない程度だった。それに、髪の毛を縛れば、ウェーブは分からない。
そして、次の日には、バーの雰囲気に似合う服を探しに出掛けた。
それから化粧品を買った。
母は、ケバイ女が嫌いだった。
香水や、化粧臭い女はもっと駄目だと言っていた。
だけど、桃子はそんな女性に憧れる。
綺麗に着飾った女達は、とても美しい。
そして、何よりも自由だ。
母はきっと、父の愛人がそんな姿だったから、必要以上にそういう女が嫌いだったのだろう。
桃子は、昨年母が亡くなってから、一人暮らしをしている。
父は、桃子が一人娘で可愛いようで、ずっと家に居ろと言ってくれたが、愛人が本妻としてやって来た時、桃子は愛人と話をしたり、仲良くするのが、死んだ母に申し訳ない気がして、家を出たのだ。
別に桃子は、愛人の佳代に対して、何の不満もない。
むしろ、佳代の華やかさに憧れていた。
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