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智代が死んでよかったのかも知れない。
桃子は、高志の話を聞いてから、そんな風に思うようになっていた。
智代は、自分だけが母親に引き取られなかった事を、ずっと恨んでいたのかも知れない。
そして、父親に捨てられた事も、すべてが憎かったんだ。
佳代が妊娠してから、智代は高志の事も、極端に嫌うようになった。
まるで近くに寄る事を、嫌がるように、高志に接した。
高志は、佳代が好きで子作りをしたわけじゃなかったが、その智代の視線に耐え切れず、家に戻る事が少なくなった。
そんな高志を、佳代は支え続けたのだった。
それでも、24年間育ててくれた母に、愛されていなかった事が、桃子には悲しかった。
智代が死んでいなければ、桃子はずっと、籠の中で、自由を奪われ生きていくところだったのだ。
桃子は、急に智代が憎くなり、智代の形見を全部、ごみ箱に入れた。
さようなら、お母さん。
もう、あなたの呪縛には、縛られないわ。
桃子はそうつぶやいた。
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