第九羽

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結婚して、1年ほどして、桃子は妊娠した。 お腹の赤ちゃんは、もちろん俊作の子供だった。 高志や佳代とも、今はとてもいい関係で、桃子は佳代の優しさに心を開き始めていた。 本当の母と娘だからこそ、佳代の優しさは本物だと思った。 「子供が生まれたら、実家にしばらく戻ってくるのよ。 みんなそうしてるんだから。」 佳代にそう言われて、桃子は嬉しかった。 「子供の首の座らないうちはね、実家で母親と一緒に子育ての勉強をするの。 協力するからね。」 「うん、ありがとう。」 桃子は、佳代が居てくれて本当によかったと思った。 でも、やっぱり実家に戻ると、智代の事を思い出す事もあった。 誰も、智代の話題を出さない。 暗黙の了解のように。 智代が使っていた部屋を、しばらく桃子が子供を産んだ時に使う事になった。
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