250人が本棚に入れています
本棚に追加
/96ページ
桃子の泣き声は、別の部屋にいた俊作たちにも聞こえた。
「桃子、どうした?」
日記を手にしながら、泣き続けている桃子に、俊作は駆け寄った。
そして、高志や、佳代もやって来た。
「桃子、どうしたんだ?」
悲しすぎて、声が出ない。
こんなに、悲しい女を、桃子は今まで見たことがない。
不器用で、愛情表現が下手くそで、それでも誰よりも桃子を心配していた母。
きっと、憎まれる事はあっても、愛される事が出来ない女、智代の生涯に、桃子は涙が止まらなかった。
高志も、その日記をめくり続けた。
そして、涙が溢れる。
そんなに不器用にしか、生きられなかった母。
籠の中で、羽を自ら毟りながら、飛び立つ事をやめたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!