緋想合戦

5/7
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
かつまた紫の天人退治はいわゆる識者の間にも、一向好評を博さなかった。 大学教授の岡崎夢美は倫理学上の見地から、紫の天子を叩きのめしたのは虐待の意思に出たものである、虐待は善と称し難いと云った。それから信仰主義の八坂神奈子は紫は酒とか花見の席とか云う私有財産を難有がっていたから、霊夢や萃香や幽々子なども反動的思想を持っていたのであろう、事によると尻押しをしたのは地底の妖怪達かも知れないと云った。それから某宗の聖白蓮は紫は仏慈悲を知らなかったらしい、たとい要石を投げつけられたとしても、仏慈悲を知っていさえすれば、天子の所業を憎む代りに、反ってそれを憐んだであろう。南無三、思えば一度でも好いから、わたしの説教を聴かせたかったと云った。それから――また各方面にいろいろ批評する名士はあったが、いずれも紫の天人退治には不賛成の声ばかりだった。 そう云う中にたった一人、紫のために気を吐いたのは泥棒兼何でも屋の霧雨魔理沙である。魔理沙は紫の天人退治は帝王学の精神と一致すると云った。しかしこんな時代遅れの議論は誰の耳にも止るはずはない。のみならず自身発行の書籍によると、魔理沙はその異変当時、異変の原因を解明中、天子に自身の得意技を盗まれたことを遺恨に思っていたそうである。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!