珈琲ハウス『ルカ』

14/16
前へ
/451ページ
次へ
「そ、そんなこと…」 私は、何言っていいか分からなくて、口を閉じる… 正直、面白くはなかった…けど、なぜか目を離せない、何かがあった… 「無理しなくていいよ…描いてる本人がつまらないって思う物が面白い訳ないんだから。だから、あの漫画は打ち切りになって良かったんだよ!」 明るく笑う中井に、私は顔を上げる。 「え…?打ち切りになって良かったの…?」 「ああ…担当から打ち切りを訊かされた時は正直落ち込んだけどな…自分が納得いかない物をダラダラと描いていたくは無かったから…だからこれでいい!」 本当に悔いはないのか、その笑顔は清々しい中井… 「もう…描かないの?」 私は、少し残念な気持ちでコーヒーカップに口をつけながら訊く。 「描くよ…俺には漫画しか能がないから…でも、とりあえず、今無職になったわけだろ?またここで働きながら1から頑張るさ!」 その笑顔に少しホッとする… 「中井は強いな~。私なんかちょっと、兄と比較されただけで落ち込むのに…」 クスッと苦笑いで珈琲を飲んでいると、中井もクスッと笑う。
/451ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3150人が本棚に入れています
本棚に追加