時追計

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とけい。 時計は秒針と分針が追いかけっこしているよう。 天から一緒にスタートし始め、秒針が懸命に一秒を刻み続けるのに分針は一分をゆっくりと刻み続ける。 この闘いは、観客の見えないところでは速く進み、観客がいると遅く展開してゆく。 そして観客も闘う。 観客は時追計を見ることにより何かに追われる速さは速くなる。 しかし、観客の場合。 見なくとも何かに追われる速さは速くなる。 観客は遅く進めない。 針が無いからである。 観客には、毒針がある。 人を速くさせたり、遅くさせたり… 観客は独りでは進めない。 独りでは時追計を眺めてしまうだけ。 しかし 眺めているようだけど 本当に時追計が追っているのは観客なのである。
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