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「何のこと~?」
自分の頭の上で飛び交う会話の意味が分からず、花緋は晋作と栄太郎の顔を交互に見る。
栄太郎はそんな花緋を見てニコッと微笑むと人差し指を唇に当てる。
「花緋には内緒~」
「え~ズルいよ2人で隠し事なんて!」
「チビスケには関係ねぇんだよ」
「チビスケ言うな!」
ドスッ
「ぐえっ」
花緋の肘鉄をモロに腹にくらった晋作はお腹を押さえて呻く。
そんな晋作を置いてズンズンと歩いていく花緋。
「損な性分だね~晋作は」
「うっせ」
苦笑しながら言う栄太郎の言葉に晋作はべっ、と舌を出すと2人は早足で花緋の背中を追いかけた。
けもの道も終わりを迎えたころ、空はもう赤く染まっていた。
もう少しで花緋達の家が見えてくる。
「結構遅くなっちゃったね」
「花緋が歩くの遅いからだろ」
「ぶー」
晋作の言葉にほっぺたを膨らます花緋。
しかし実際遅くなったのは2人が花緋の歩調に合わせて歩いてくれたからである。
あながち嘘ではないので言い返す事のできない花緋。
「今日はお父さん、早く帰るって行ったからもう帰ってるかも」
桜の花の香りを嗅ぎながら、トボトボ歩く花緋。
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