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「私の言動がご不満なら、どうぞ私を斬ってください。
しかし、何の罪もない人に手を出す事だけは見逃せません!」
芹沢に鉄扇を喉元に突きつけられて尚、花緋は意志を貫き通しハッキリと告げた。
言わずもがな芹沢は花緋の言葉に怒りを覚え、酒で既に赤く染まっていた顔を益々色濃くした。
鉄扇を握る手にグッと力を込める。
「言わせておけばずけずけと……ッ!
身の程を知らんかたわけが!!」
ドスの効いた声でそう叫ぶなり、芹沢は思いきり鉄扇を振り上げた。
――殴られる……ッ!
芹沢が振りかぶった瞬間、花緋は殴られることを覚悟してギュッと目を瞑った。
しかし。
ガンッ!!
「…………?」
鈍い音が耳に届いたというのに、自分に痛みがないことに疑問を覚え花緋はゆっくりと片目を開いた。
「新見、貴様ァ……!」
「に、新見さん……!?」
花緋は目の前の光景に目を丸くする。
そこには花緋と芹沢の間に立って、鉄扇を刀で受け止める新見の姿があった。
「……出過ぎた真似をした事、まことに申し訳ありません。しかし、――風間が殴られるのを黙って見過ごす事はできません」
新見が芹沢に意見することなど、花緋は見たことがなかった。
いや、花緋だけではない。
他の三人や、芹沢までもが信じられないというように大きく目を見開く。
しかし、しばらくすると芹沢は鉄扇を下ろすことなく新見を鋭い目で見据えた。
「貴様まで儂に楯突く気か?」
「いいえ、芹沢さんの為を思ってのことです」
「儂の為……だと?」
新見の言葉に芹沢は眉を寄せて、ようやく鉄扇を持つ手を下ろした。
それにあわせて新見も、盾代わりにした刀を腰に戻す。
そして真っ直ぐと芹沢を見つめながら新見は口を開いた。
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