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それからというもの、花緋は常に芹沢と行動を共にした。
できる限り日中は目を光らせ酒を飲ませないようにし、その代わり寝酒は毎夜きちんと振る舞う。
こうする事で金策に出かける日中、酔いにかまけて乱暴を働くことがなくなり以前に比べるとかなり平和的に進むようになった。
本当は金策自体止めるべきなのだろうが、如何せんそうなれば壬生浪士組は芹沢の言った通り飢え死にしてしまうだろう。
多少大人しくなったとは言え、未だに京の人々の目には“壬生狼”として写っている。
これを払拭するにはまだしばらく時間を労するしかないのだろうが、芹沢が問題を起こしてばかりだった頃よりは遥かにマシになった。
「よくやった風間。お前をつけてからこっち苦情が格段に減った」
芹沢の寝酒を取りに台所へ来ていた花緋に、土方は満足そうに笑ってみせる。
花緋を付かせた効果は上々のようだ。
「それは良かったです。京に引っ付いてきた甲斐がありました」
「ふっ、そうだな。たまにはお前のその男勝りも役に立つ」
「あっ、またそういう意地悪言う!
……にしても、これで金策をしなくても済むようになればもっといいんですけど……」
そう呟いてため息を落とす花緋。
そんな花緋の言葉に土方は顔を引き締める。
「……近いうち、必ずその日は来るさ。俺達はこれからどんどん上に行くんだ、絶対にな」
そう断言する土方は、胸に熱い炎を宿し己に言い聞かせるかのように頷いた。
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