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それからというもの、お梅は毎日芹沢の元へと通った。
その度に3両だけ払う芹沢。
お梅は、困ったように小さく息を吐いて懐にそれをしまう。
もう何度目だっただろうか。
さすがに堪忍袋の緒が切れたであろうお梅は、いつも通り3両を手渡してきた芹沢の手を思いきり払った。
これには、側にいた花緋と新見も絶句する。
芹沢を見ると、訳が分からないとばかりに目を丸くして立ち上がるお梅を見上げた。
「いい加減にしてぇな!うちを何回来させる気ぃなん?毎日毎日、お駄賃貰って帰る子供みたいな真似させんといて!」
そう啖呵をきったお梅は涙目になりながらも怒りの目を芹沢に向け、お金を受け取らないまま部屋を飛出す。
部屋に残された3人は暫く茫然としていたがハッと我に返った花緋は、その場を新見に任せて急ぎお梅の後を追った。
「お梅さん、お梅さん待ってください!」
花緋がようやくお梅を捕まえたのは屯所から少し行った先にある橋の袂だった。
「……うちはもう彼処には行かへん」
花緋に掴まれたままの自分の手首を見つめながら、涙を浮かべる。
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