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空元気で花緋がそう言ったという事は2人には明らかだった。
だがこれ以上は何も言わなかった。
言ったら花緋がまた気を使うだろう事は2人には手に取るように分かったからだ。
それにー…
そろそろ花緋には2人がいない事に慣れていってもらわなければならない。
2人には大志がある。
日本を変えるという、大志が。
その為にはいつかこの村を出ていく事になるだろう。
だがその志を貫くには大きな危険が伴う。
そんなものに花緋を巻き込むつもりは2人にはなかった。
晋作も栄太郎ももう15歳。もう少しで大人の仲間入りなのだ。
もう今のように遊んでばかりではいられなくなる。
花緋と2人が離れるのはきっとそう遠くない未来であろう。
でも……
ーーコイツを守れるのは俺達だけだ。
晋作は花緋を見る。
晋作が渡した桜の枝を大事そうに抱える少女。
10歳の小さな身体では背負いきれない程の重荷を花緋は必死に受け止めて、生きてる。
いくら村の連中に邪険にされようと、決して涙を見せる事はなかった。
“近寄るんじゃないよ!病がうつったらどうしてくれるんだい!?”
“どっからそんな病気持ち込んできやがった!汚らわしい!!”
罵声に花緋はただ睨みつけるだけ。
人前では泣かないと彼女は決めていたのだろう。
後で1人になった時、体を小さくして声を殺して泣いてるのを見た。
守ってやらなきゃ。
そう思った。
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