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「ユギア村……北東にある小さな村だ。
…そこを亡ぼして来い」
「…なんですって?」
むせ返るほどの麝香(じゃこう)の香りが満たす部屋で、しゃがれた声が精神的打撃を与えるような言葉を吐き出した。
それを書き消すように、女の凜とした声が香を震わせる。
「聞こえなかったかね。アンデルス中佐」
「いえ、申し訳ありません」
威圧を感じさせる確認に即否定をした
上司の命令は絶対である聞き漏らす事は勿論、聞き返すなど以ての外だ。それでもリーディアが斬られぬのは、ひとえに彼女の実績の賜と言えるだろう。
「すぐにでも」
命令という物は常に冷酷だ。感情ごろし、と言っても過言にはならない。とリーディアは常日頃から思っている。
過去から掘り起こした取り留めの無い考えを、脳内の屑箱に放り込んで中将の部屋を後にした。
夜闇よりも深い漆黒の瞳に嫌悪を滲ませ、自身の腰まであるぬばまたの黒髪を揺らす事で私情を振り払った
自身の隊に非情を届けに
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