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地面を蹴った筈の足が竦んでいた。
膝が少年を嘲るように笑い、震えのせいで力が入らなくなった手からナイフが落ちた。
何よりその場に縫い止めさせているのは、本物の殺気。
逸らせない眼、冷たい静寂(しじま)をもたらす闇。
「お前………名前は?」
声ですら恐ろしい…―
「セ…イアー………」
「そうか、良い名だ」
うっすらと口角を吊り上げるだけの笑顔。
這い上がる戦慄に冒されそうになったセイアーは、限界を告げる直前で
意識を絶った
崩れかけたセイアーの身体を支える。いくつかは分からないが、男子としてあまりにも軽い肢体を抱えてリーディアは歩き出した。
「中佐、ソイツは……」
「私の家で預かろう」
虜囚としてな。
そう言い放ったリーディアはとても、静かな表情をしていた。
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