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『ほんと?』
解りきった答えを私は聞き返す
「うん、ほんとだよ」
そういって彼は微笑んだ
ほらね、ほんとは私じゃなくあの娘が好きなくせに…
『私もくぅが大好き!』
彼の名前は空都(くうと)だから私は“くぅ”って呼ぶ
私の名前は砂海(さうみ)だから彼は私を“うみ”って呼ぶ
私たちは高校2年生
下校中に手を繋ぎ
一緒に歩いていた…
でも……
「あっ!!くぅ!…じゃなくて、空都!!今帰り?」
解りきった答えを聞く声が後ろから聴こえた…
その時、くぅの手はいつもより熱くなる…
「おぅ!お前は部活か?」
「うん!!」
このくぅと話してるこの娘は雨音(あまね)、くぅはそのまま“雨音”と呼んでいる…
会話が続いていく中
私はくぅの手を離した……
だんだん熱くなるくぅの手が雨音を好きだと叫んでいるから、その現実から逃げた…
くぅは少し驚いていた…
でも、笑顔を見せると笑ってくれるから私は満面の笑みを浮かべた…
くぅも私に満面の笑みでかえした…
「あっ、ごめん空都、邪魔しちゃったね」
「いや、大丈夫だよ、なっ?うみ」
『うん、大丈夫!』
ほんとは大丈夫じゃない…
でも…嘘をつくしかないと思った……
雨音を傷つけないように
くぅを傷つけないように
「じゃあね、うちまだ部活中だから」
「おぅ!!じゃあな」
私はずっと微笑んでいるしかなかった…
「うみ、待たせて悪いな」
『ううん、大丈夫だよ』
このあと私はくぅと手を繋がなかった…
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