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「ねぇ、猫。私の可愛いかわいいチェシャ猫」
「なんだい、公爵夫人」
彼女はいい笑顔で囁く
甘くあまく毒を囁く
「私、あの子がほしいわ」
「あの子って?」
「ハートの女王様の玩具、白兎のお気に入り」
「あぁ、あの子」
「名前は何だったかしら、そう確か」
アリス
迷い子のアリス
哀れな憐れな世界の異物
「あの哀れなあの子がほしいの」
「そう」
「ねぇ、奪ってきて?」
無邪気な笑顔で
それが簡単な事のように
彼女は囁く
「世界を敵に回してもいいわ、私あの子がほしいの」
歪みきった存在が笑う
歪んだ笑顔で笑う
「いいよ、オレはキミの猫だからね」
「ありがとう、私の可愛い猫」
我侭な彼女の我侭から始まった一つの物語
語られる事のなかった物語が、動き出した
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