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月姫は慌てて彼女に駆け寄って人を呼ぼうとしましたが、百合姫はそれを拒みました。
「どうして、弥勒。なにか理由があるの?」
月姫は彼女に問いますが、返事がありません。やがて彼女は重々しく口を開きました。
「私は、知ってはいけないことを知ってしまった。だから、ここには居れないから、だから、これをあなたに・・・」
そう言って彼女が月姫に手渡したのは、赤い石のついた首飾りでした。
月姫はそれを手に取って眺めてみますが、それといった特徴はありません。金の鎖に赤い石がついているだけです。特別な装飾がされているわけでもなく、ましてやなんらかの細工が施されているわけではありません。
「それを持って、早く逃げて。あなたは呪い師で一番信用できる人だから、あなたに託す」
「弥勒?」
月姫が彼女の名を呼びますが、彼女は応えません。月姫がそっとその頬にふれてみると、彼女は既に息絶えていていました。
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