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――遥か昔。未だこの世に定まれる大地有らず、例え大地がこの世に存在せしめども、それは漂える土くれなり。
女は自分の頭の上を見た。女の上には何もなく、ただ灰色に濁った、機嫌の悪い空が広がっている。
女は美しかった。背は高く、腰まである銀の髪に青い目をし、口紅を塗っているのではないかと思うほど、その血色は良い。
黒いシャツを着、そしてシャツと同じ色の裾を絞ったズボンと、黒く染められた編み上げのサンダルを履いていた。気味悪いほど黒い服装に、銀の髪がよく映えている。
女は濁った空をみて不機嫌そうに鼻をならすと、後ろを振り向いた。女は陸地に繋がれた、頑丈で大きな船の上におり、その視線の先には、フードを被った子供がマストの上によじ登って、船の帆を下ろしていた。
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