197人が本棚に入れています
本棚に追加
/132ページ
私は森のなかでさ迷っていた。
校外学習でキャンプに来ていたのだか、皆とはぐれてしまったのだ。
「…ーナ、ジーナ!」
後ろから名前を呼ばれた。
振り返ると担任が後ろから走って近づいてきていた。
「あ、先生!」
「ジーナ、心配したぞ。みんな向こうで待ってるから早く行くぞ。」
助かった。遭難したかと思った。私はそのまま先生の後ろをついていった。
あれから20分くらい経っただろうか。なんだか胸騒ぎがしていた。
「先生、あとどれくらいで合流できますか?」
「そうだなぁ…そろそろかな」
それだけ言うと先生は黙りこんで立ち止まった。
「どうしたの?先生。」
振り返った先生の顔を見た瞬間、私は気を失いそうになった。
「化物…」
牙を剥き出しにした口からは唾液をだらだらと流し、全身に血管を浮かび上がらせ、こちらを見ている。大人達が『妖魔』と呼んでいるものにそっくりだった。
そして化物になった先生が私に向かって飛びかかってきた。
とっさに避けたつもりが、そのまま脇の斜面から転げ落ちてしまった。
斜面が終わり、ようやく体が止まった。起き上がろうと地面に手をついたとき、なにか生暖かいものに触れた。
血だ。ぶつけた所は痛むけど自分はどこも怪我をしていない。
急いで体を起こすとそこには、見慣れた格好の人が何人も血を流して倒れていた。
クラスの皆だ。
そして化物になった先生が追い掛けてきた。
「どうした…ジーナ…。ちゃんと皆と合流できただろ?なんで逃げるんだよ…」
先生はゆっくりと近づいてくる。私は恐怖で一歩も動けなかった。
もうだめだと思った瞬間、先生の首が飛んだ。
大きな剣を携えた、銀色の瞳をした女の人が先生の首を斬り落としたのだ。
それからの事は全然覚えてない。気が付いた時には薄暗い部屋のベッドの上に横たわっていた。
急いで身体を起こした。
「…っ!!」
腹に激痛が走った。
服をまくってみると酷いことになっていた。言葉で表現するのは難しい。とにかく自分の身体じゃなくなってしまった感じだ。
痛みを堪えてベッドから降りた。そのままフラフラと壁にかけてある鏡に向かって歩いた。
鏡をのぞき込んで私は絶句した。
銀色の瞳をした自分が映っていたのだ。髪の毛の色素も、白ではないがずいぶん抜けていた。
突然、部屋の扉が開いた。
「やっと目が覚めたか、ジーナ。」
そこには黒服の男が立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!