197人が本棚に入れています
本棚に追加
/132ページ
《ガキィイイン!ガガガ…》
「く…」
《ガシュ…!ドシャ…!》
私はアルスを斬り伏せた。もう動けないだろうと判断し、剣を収めた。
「ガハッ!ゲホッ…ゲホッ…。なぜだ…なぜとどめをささない…。」
「その必要はないからだ。お前はもう、しばらくは動けないからな。」
「それで…情けをかけたつもりか…?」
「そんなつもりはない。ただ、無駄に命を奪う事はしたくないだけだ。ここでお前を殺しても私達は何の得もしないしな。」
「お前達は…組織を抜けてどうするつもりだ…。なんの為に…。」
「この戦いを…いや、全てを終わらせる為さ。」
「全…てを…。」
「さ、そろそろ行こうか。今の戦いで結構近くにいる仲間に居場所を悟られたみたいだしな。みんな、動けるか?」
「あたしら二人はもう大丈夫だけど、ミネアがまだ…。」
ミネアの意識は戻っていたが、まだ動けないでいた。私は彼女を抱え上げた。
「す、すみません…。」
「それじゃ、行くか。」
私達は妖気を消す薬を飲み、次の地を求めて出発した。
「…下位戦士にやられるようじゃ私もまだまだって事か…。…いずれ…」
…この時アルスが何を思っていたかは彼女以外誰も知らない。
そして、修行開始から一年が過ぎた。
「もう私が教えてやれる事は何もないよ。三人ともよく頑張った。」
「あたしはあんまり強くなった実感ないけどな。だけど、ミネアがここまでついてこれるとは思ってなかったよ。最下位ナンバーの汚名返上ってところか?っはは!」
「キアラさん…汚名返上って…。」
「ん?あぁ、ごめんごめん!汚名ってのはちょっと言い過ぎだったな。」
「…全くだ。」
「あ、あの…」
ミネアの顔が急に険しくなった。
「どうした?」
「あ…あっちの方角に強い妖気を感じるんですが…気のせいでしょうか…?」
全員ミネアが指を差している方向へ神経を集中させた。
「え…。あ…あたしはこんな妖気、今まで感じたことがないぞ…。なんだ?このまがまがしい妖気は…。」
「超…覚醒者…。」
「ジーナ、これがそうなのか…?」
「…間違いない。あの時の妖気とそっくりだ…。」
「これ…誰かが戦ってますよね…?大きな妖気のそばに、もう一つ妖気を感じるんですが…。」
「…!!」
…リオンだ。しかも一人で戦っている感じだ…
「ラルフ!」
最初のコメントを投稿しよう!