プロローグ

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「あら?  起きちゃった」  思った通り、人がいた。年上の女性ってのは声を聞いてわかったけど、顔が見えない。  いや。正確に表現すると、相手の顔全体にモヤがかかっている感じなのだ。 「お姉ちゃん?」  寝ぼけ眼のまま、その女性に俺はそんな事を言いやがった。  自制が効かないってのは、こんなに不便なんだね。  そのままトテトテと女性の下へ小走りで近付いていく。  って、俺ちっさ! 今頃気付くのもあれだけど、俺ちっさ!  幼稚園生並みじゃね? 「あらあら。甘えん坊さんね」  いやー。照れるね――じゃねぇよ!  女性は俺を膝の上に乗せ、いいこいいこしてくる。  周りに人がいないからいいけど、ほとんど羞恥プレイじゃねぇか! 「ねぇ? これからどこ行くの?」 「ん? 遠いとこよ。  あなたが幸せに暮らせる場所」 「しあわせ?」 「そう。  そこでみんな忘れて幸せな毎日を送るのよ。……様」  最後に女性が発した単語が聞き取れなかった。  刹那――俺の意識はブラックアウトした。
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