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そして………
「9…、8…、7…、」
悟が地面に横たわりながら、寝言なのか寝息なのか分からないような微かな声で数を逆に数えていた。
一瞬、なんのことだか理解できなかったが、どうやら神奈には分かったみたいだ。
「6…、5…、」
「もうそんな時間かぁ…」
神奈は背伸びをして立ち上がると、私に警告みたいなことを言ってきた。
「そら、千秋(ちあき)。立った立った」
「へ?」
「2…、1…、」
神奈の言ったことを理解するのに、それほど時間はかからなかった。
「どぅえりゃああぁあぁぁっ!!」
ドドドド!!
「………悟ぅ?」
目の前を見ると、ついさっきまで寝ていたはずの藤原(ふじわら)悟が一瞬にして消えていた。
残ったのは、砂煙の舞い上がった空間だけだった。
屋外なので、すぐに煙はなくなったが、神奈もいつの間にか消えていた。
砂煙を発生させる新手の神隠しか?
それにしてもやけに痕跡の残る神隠しだと思った。
………じゃなくて。
「はやっ!?」
そうなのだ。
一瞬の出来事でパニックになっていたので理解できなかったのだが、悟がカウントダウンを終えた後に凄まじいダッシュで砂煙を上げて、この屋上から姿を消したのだ。
それと同時に神奈も同様にダッシュで走り去っていった。
走り去る?
どこへ?
…………。
「授業に遅れるぅぅぅ!?」
立ち上がろうと足を動かしたのが命取り。
その、なんとも言い難いジ~ンとくるような電撃を受けたようなショック。
「うひゃおほふ!?」
私はそのまま倒れ込んで、しばらく動けなかった。
「ぁぅぁぅ……」
誰か助けてと思うのと同時に、こんな醜態を見せられない~、と思う気持ちがせめぎ合い、なんとも言えない感情が千秋をトホホ涙へと誘った。
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