不幸の手紙とかチェーンメールがきても回す相手がそんないない奴

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「これから息子さんをお預かりしますが、長期休暇なんかでちょくちょく帰って来られますから。 それと……」 それまでの和やかな雰囲気から一転、ライアンが目を細め、低い声で言った。 「くれぐれも魔法の事は口外しないようお願いします。記憶消したりなんだり、いろいろ面倒なんで。 ……さて、行くか」 眼鏡の女性がローブのポケットから30センチ程の長さの杖を取り出し、何か唱えると空間を切るようにして振った。 杖の軌跡に光の線が残り、それがだんだん広がったかと思うと巨大な裂け目へと変わる。 「んじゃ、行ってきまーす」 振り返り、修はそれだけ言った。 辺りには何もない。ただ白い光が渦巻いているだけだ。 自分達以外には白しか色がないため状況がよく分からなが、前へ進んでいることはなんとなく分かった。雲のように白さに濃淡があり、それが後ろへ流れて行くのだ。 「そういえば自己紹介がまだでしたねぇ~」 女性が口を開いた。 「今年からアクアフィールで魔法薬学を教えることになりました、アリア・クレイアスといいますぅ」 「教師なんスか?!」 「そうですけどぉ?」 生徒には見えこそすれ、とても教師には見えない。 「こんなアホがなんで教師になれたのか……」 隣でライアンが呆れたように言った。 「あっ……アホじゃないですぅ~!」 「ほら、出口だぞ」 空中でじたばたするアリアに気をとられ、ライアンに声をかけられるまで修は異変に気付かなかった。前を向くと、草木が生い茂る風景を映した窓のようなものがある。 「うわっ!?」 そこへ向かって急激に引っ張られ、体勢を崩したまま修は地面に放り出された。
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