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三畳の狭い部屋で瀬希は萎縮していた。原因は一緒にいる藤堂が醸し出す怒気だった。
押し入れから胴着を出す彼の背中を黙って見つめていたが、息詰まる空間に我慢が出来ず瀬希は恐々と口を開いた。
「あの藤堂さん、急にどうしたんすか?」
忙しなく動いていた藤堂の手が止まった。
「何が?」
地を這うような声が返され、更に萎縮してしまいそうになるが、意を決して核心を突いた。
「さっきから芹沢さんに怒ってますよね?」
刹那、彼は勢い良くこちらを振り向いて笑った。しかし目だけは未だに怒りに満ちており、そのちぐはぐな表情が恐ろしかった。
「怒っているのは僕だけじゃなく君もでしょう?」
「えっ?」
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