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「もう! 藤堂さんってば早くしてくださいよ!」
怒りながら部屋に入ってきたのは妙と呼ばれた若い娘だった。頬を膨らませて仁王立ちでいる姿が少し紗恵と似ていた。
(それにしても……こいつうるせぇな)
女特有の甲高い声が何故だか耳障りで瀬希は不快に感じた。そして耳だけじゃなく徐々に身体中が彼女を拒絶しているような感覚に陥った。
「さっさと多嶋を連れて来いって土方さん怒鳴ってたんだから!」
「ごめんごめん。あ、瀬希君紹介するよ。住み込みで八木家で働いてる高木妙さん。お妙さん多嶋瀬希君です」
瀬希の変化に気付いていない藤堂はにこやかに二人の紹介を済ませた。
「瀬希って変わった名前してるのね。かっこいい」
語尾を上げて喋りかけてくる妙が鬱陶しい。恐らく生理的に相性が合わないのだ。
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