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その弓は赤と黒の混ざった重い雰囲気を醸し出し、対して12本の矢は赤・黄・緑、所謂信号色の羽が着いた派手なカラーリングで構成されている。
「自分の弓矢だ…」
健一は今起きた事象に驚いて、冷たい床に尻餅をついた。
「それがあなた、佐藤健一の能力。…そうね“物を創り出す程度の能力”ってとこかしら。」
「能力の細部はわからないけど、とりあえず便利な能力ね。」と付け加えた。
「ありがとうございます!」
健一は図書館全体に響き渡るくらい大きな声で叫んだ。
「あのーどなたか存じませんが、館内ではお静かにお願いします。」
山積みの本を持ちながら注意しに来た小悪魔。
健一は慌て謝り、小悪魔に自己紹介をした。
そこで突然、パチュリーが咳き込み始めた。
小悪魔が「喘息の薬どこにあったかしら!?」と図書館内を急いで探し回る。
これを見た健一は
(早速自分の能力の出番だ!)
心の中でそう言ってから手の平をパン!と合わせ、能力を使用する。
空気が弾けるような独特の音を発した直後、健一の手の平に白い錠剤が創り出された。
「こ、これを!」
途切れ途切れに「ありがとう」と小声で礼をすると、パチュリーはそれを飲んだ。
突発的な発作も止まり、一息ついたところで健一は立ち上がった。
「あ、スカーレット姉妹に挨拶しなきゃ。それじゃ、お大事に。そしてありがとうございました。」
健一は小走りで図書館を出て行った。
そこに残された小悪魔とパチュリーの会話。
「健一さん、凄い能力ですね。」
「えぇ、しかし、私が常備してる薬とすり替えて飲んだ事には気付いてなかったわ。」
「そ、そうだったんですか!?」
小悪魔もパチュリーの一連の動作に気付いていなかった。
知識の無い物を創り出しても、それは見た目しか完成しないの。これは無味無臭、無効能なただの白い塊。とパチュリーが補足。
「“あれ”を持たせれば化けるわね…」
そう呟いたパチュリーは健一に貰った錠剤を燃やし、隠滅した。
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