第二章 そして紅魔館へ

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その弓は赤と黒の混ざった重い雰囲気を醸し出し、対して12本の矢は赤・黄・緑、所謂信号色の羽が着いた派手なカラーリングで構成されている。 「自分の弓矢だ…」 健一は今起きた事象に驚いて、冷たい床に尻餅をついた。 「それがあなた、佐藤健一の能力。…そうね“物を創り出す程度の能力”ってとこかしら。」 「能力の細部はわからないけど、とりあえず便利な能力ね。」と付け加えた。 「ありがとうございます!」 健一は図書館全体に響き渡るくらい大きな声で叫んだ。 「あのーどなたか存じませんが、館内ではお静かにお願いします。」 山積みの本を持ちながら注意しに来た小悪魔。 健一は慌て謝り、小悪魔に自己紹介をした。 そこで突然、パチュリーが咳き込み始めた。 小悪魔が「喘息の薬どこにあったかしら!?」と図書館内を急いで探し回る。 これを見た健一は (早速自分の能力の出番だ!) 心の中でそう言ってから手の平をパン!と合わせ、能力を使用する。 空気が弾けるような独特の音を発した直後、健一の手の平に白い錠剤が創り出された。 「こ、これを!」 途切れ途切れに「ありがとう」と小声で礼をすると、パチュリーはそれを飲んだ。 突発的な発作も止まり、一息ついたところで健一は立ち上がった。 「あ、スカーレット姉妹に挨拶しなきゃ。それじゃ、お大事に。そしてありがとうございました。」 健一は小走りで図書館を出て行った。 そこに残された小悪魔とパチュリーの会話。 「健一さん、凄い能力ですね。」 「えぇ、しかし、私が常備してる薬とすり替えて飲んだ事には気付いてなかったわ。」 「そ、そうだったんですか!?」 小悪魔もパチュリーの一連の動作に気付いていなかった。 知識の無い物を創り出しても、それは見た目しか完成しないの。これは無味無臭、無効能なただの白い塊。とパチュリーが補足。 「“あれ”を持たせれば化けるわね…」 そう呟いたパチュリーは健一に貰った錠剤を燃やし、隠滅した。
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