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「…なさい……起きなさいよ!」
健一が目を覚ました時、赤と白を基調とした巫女服を身に纏った女性の姿が視界に入った。
「あ、霊夢だ。」
その一声を聞くと霊夢と呼ばれた巫女、博麗霊夢は「またか…」と溜め息をついた。
健一の予想を覆す反応に対し、思わず質問を一つ。
「え、そこって『なんで名前を知ってるの?』って驚くところなんじゃ?」
これに対し霊夢は“どういう訳か外界から博麗大結界を抜けて幻想郷にやって来る人が日に日に増している”という事を健一に説明した。
それを聞いた健一は幻想入りの小説は実話だったのかと、苦笑いを浮かべる。
「そういえばあんたの名前を聞いてなかったわね。名前は?」
健一は「初めまして、佐藤健一です。」と手短に答えた。
「そ、健一ね。わかったわ。それで?これからどうするつもり?」
この質問には答えが無かった。
正直に「部活を少しサボりたいだけだったのですぐに帰ります。」と言っても良いのだが、それではせっかくの幻想入りの機会がもったいないと思い始めたからである。
「…考えが無いみたいね。仕方ないから選択肢を与えるからどちらかを選びなさい。」
そう言って「このまま鳥居をくぐって帰る」「里に住む」の2つを挙げた。
それに対し健一はすかさず
「Cの紅魔館に住むでファイナルアンサー!」
と答えた。
霊夢は一瞬唖然としたが、「じゃあ頑張ってね。」と端的に言葉を発し、懐から幻想郷の地図と手紙を取り出して健一に手渡した。
(え、何このお決まりのパターン。)
「道中で妖怪なんかに襲われないよう気を付けてね。」
霊夢はそれだけ言い残すと神社の中へ姿を消した。
「…って、生身の人間に紅魔館まで歩かせるつもりですか!?」
慌てて叫ぶが、霊夢の姿は見えないまま。
(無視かよ…)
健一は軽く溜め息をついた後、ポケットから財布を取り出して一言。
「霊夢さーん、お賽銭入れるから紅魔館まで連れて行って下さいよー。」
たった3秒で戻ってきた。
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