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博麗神社の階段に差し掛かったところで健一は霊夢に握られていた手を離して貰った。
歩き辛い上異性に対する耐性が無い健一は紅魔館まで平常心を保ち続けるのが困難だと判断したからである。
そして、何かを思い出したように霊夢が口を開く。
「そうそう、さっきあなたは自分の住んでる世界…って言ってたけど幻想郷もあなたの世界も、同じ一つの世界よ?普段は結界によって互いの世界を行き来出来ないようになっているだけで。」
霊夢は一息ついてからそれにしても、と話しを続ける。
「あのスキマ妖怪はなんでこんな奴を連れて来たのかしらね。」
健一が幻想郷に来た原因は八雲紫にあるといきなり断定した事を不思議に思い霊夢に質問をしようとするが、紫が“境界を操る程度の能力”を持っている事を思い出した為にそれを止めた。
そのとき、2人の目の前に健一が先程見たばかりである空間の裂け目が現れた。
「あら、呼ん「でない!」」
宙に浮いた真っ黒な空間から現れた紫の第一声を霊夢が遮り、握り拳を頭上に構えた。
面倒事を極力避けたい健一は2人の間に割って入り、霊夢を宥めた。
「まぁまぁまぁ、噂をすれば影って奴なんじゃないですか?…あ、えーっと、紫さん、なんで自分を幻想郷に連れてきたんですか?」
健一が間髪入れずにストレートな質問をぶつけると、霊夢が耳を疑う答えが返ってきた。
「あら、何を言ってるのかしら?佐藤健一、あなたの“幻想郷に行きたい”という願望を叶えてあげただけよ。私の気まぐれでね。」
健一は紫に質問を投げかけた事を後悔した。
「つ・ま・り?こうやって私をわざわざ紅魔館まで歩かせる原因は健一にあると?」
顔はにこやかだが、目や声は明らかに殺気に満ち溢れている。
「ちょ、だから手数料的な意味も込めて500円を2枚もお賽せ「霊符、夢想封印!」」
ぎゃあああああ!!
「…ほら、一応手加減はしておいたからとっとと歩く!早くしないともう一度使うからね!」
霊夢のスペルカードによってボロボロになるも、脅迫じみた言葉に急いで歩き出した。
紫の存在を忘れ歩き出した2人の後ろ姿を見届けた後、ポツリと一言。
「今回の人間は楽しませてくれそうね。」
勿論この声が2人に届く事はなかった。
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