赤の章 紅梅

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 彼が頁を進める毎に、より激さを増す雨風。時折空をつんざく雷霆は、申し訳程度に空けられた窓の外で、威勢を轟かせていた。  机上では、黒く小さな石塊が、赤茶けた皿の上でちりちりと火を上げている。  そんな中、ふと、彼の異常なまでの集中が途切れた。見ると、あの名ばかりの窓から、風に唆された雨水がこぞって浸入してきていた。  流石の彼も、書物が濡れるのは躊躇われるらしく、窓から少し距離を取った。
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