赤の章 紅梅

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 石造りのためか、図書館は雨の影響で冷気を含んでいる。  彼が身を震わす度にふさふさとした尾が揺れる。つい先程までは自前の毛皮で防げたが、こうざんざんと降り込まれてしまえば、この露出の多い武道着では寒い。  雨に当たらないように窓とは反対側の壁際を歩くが、それでもこの寒さは耐え難い。彼の歩みは、心なしか足速になっていた。  折り返し階段を下がった突き当たりに、彼の目的地はあった。
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