赤の章 紅梅

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 廊下には等間隔で各部屋への入口が並んでいる。それが突き当たりの壁まで続いており、一番奥の入口からは、淡く光が漏れている。  彼は廊下に咳払いを一つ落とすと、その部屋へと足を踏み入れた。彼が入った部屋は、司書室として使っている。この部屋だけ唯一窓が無く、風雨の心配もないためだろう。  図書館には扉がない。というより、元々なかったと言ったほうが正しいだろうか。ここは小高い丘の上にあった廃墟を、それなりに改装して出来た建物である。  当時はそこら中を木々の根という根が這い回り、透明な破片などがそこここに散らばっていたりと、それはそれは悲惨な有様であった。  今でこそ、ある程度機能するようにはなったが、ここは未だにあらゆる植物の根城である。
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