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入るなり、彼は嘆息した。
そこには、ともすれば忽ち本の山が出来上がるであろうというほど、部屋中所狭しと本が積み重ねられていた。物寂しげにその身を空けた棚が、視界の隅に映る。
彼は石塊の火を消し、壁に掛けてあった頭巾のついた外套を羽織った。すると、物音に気付いたのか、部屋の奥から声が聞こえてきた。
「読み終わったか、俺の新作」
「終わるも何も、あの作品、まだ完結してないだろ」
「まぁ、そうか。感想はどうだ」
「面白いが……表現がくどい」
「はは。それが売りだからな」
それだけ言うと、その人物は再び机に向かい作業を始めた。彼は物書きなのだ。
実を言えば、図書館にある書物も、殆どが彼の作品である。
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