第一話

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「いや、確かに引っかかる。霙の剣士なんて二つ名を持っていながら依頼が舞い込まないわけがない」  シグマが手を止めて言った。 「・・・俺には一人の同行者がいる」  止まる様子が無かった手を休めて、呟くように言った。 「ほう、同行者、ね」  シグマは怪しむような目でユキを見る。 「・・・なんだよ。その目は」 「連れて行け」 「・・・・・・や「連れて行け」・・・」  ユキの言葉を遮ってシグマが言った。 「・・・後悔するぞ」 「分かった。じゃあひとまずこの仕事が終わったらな」 「・・・・・・」  ユキは黙って食事を再開した。 「んじゃま、そろそろ行くか」  食事を終え、準備をしていると、シグマが立ち上がった。 「ん」  ユキは剣を腰に差して立ち上がる。 「油断は禁物よ? カルト」 「分かってるよ」 「シーリュ、行こっか」  明朝、シグマ傭兵団とユキは山賊が根城にしている砦に到着した。  そこに、一足先に出ていたサーリャを乗せたシーリュが、ゆっくりと降り立つ。 「敵は外に居るのは五人くらい、中はわからない」  サーリャがシーリュの上から告げる。 「五人、まあそんなとこだろうな。中にはおそらく十人ってとこか」 「分かるのか?」  ユキが不思議そうにシグマを見る。
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