第一話

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「山賊程度なら俺達だけで十分だろ」 「それがそうも行かぬのじゃ・・・その山賊というのが、元国防軍の連中じゃからの・・・・・・」 「国防軍っつーと・・・・・・元スーライトのか?」  カルトの問いに、老人が頷いた。スーライト帝国は、二年前、このリガーナ連邦に統合された国だ。リガーナ連邦は独自の軍隊を所有し、統合された国は軍から技量のあるものを引き抜いた後、解体される。 「あのならず者軍隊なら解体されて賊になってもおかしくないわね」  ミクラの言うとおり、スーライト軍は国内外問わず評判が悪く、自国の町村から金品や食料を巻き上げるなどは日常茶飯事だった。軍が解体されて喜んだ元スーライト国民も少なくない。 「じゃがならず者とは言え軍人、油断は禁物なのじゃ」 「それで俺も呼んだってわけか」  ユキの言葉に老人は頷いて答えた。  さて、とユキが立ち上がる。 「とっとと行こうぜ」 「もう昼過ぎだ。一日くらい休んでからでもいいだろう」  シグマの言葉に今からだと着く頃には夜だしな、とカルトが付け足す。 「俺には朝を待つほど余裕はない。それに夜なら向こうも油断しているだろ」 「夜だからこそ警戒している。緊張が解けた朝が一番油断する時間帯だ」
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