デビュー

11/14
前へ
/44ページ
次へ
「今日はユイが好きなポタージュ作ったから早く着替えておいで」 「うん。」 私はパンパンの鞄を隠すようにして玄関横の部屋に入った。 「はぁー…」 無駄に緊張した。 母にバレたらどんな顔するだろうか。 考えただけでゾッとする。 私はベッドに投げた鞄を目に写した。 私はおもむろに鞄を逆さまにして鞄のものを取り出した。 服、つけまつげ、DVD、化粧品、アクセサリー、キャラグッズ… こんなのお金はらったらいくらになるのだろう。 カーペットのうえに広がる本日の戦利品達は 部屋に置いてあるもの達の中で一番輝いて見えた。 もちろん、犯罪というリスクを背負い盗んだものだから。 そのくらい価値があり、そのくらいスリルがあり、そのくらい楽しい。 私はそれを大切にしまった。 リビングにむかうと焼き魚と昨晩の残りのおでんと、そこに不釣り合いなポタージュが存在感を放つ。 この母の作るポタージュが絶品なのだ。 私がいつもの椅子に座り、焼き魚に醤油をつけ食べはじめた。 隣には姉が携帯をいじりながらおでんに手をつけている。 「こらユナ!携帯いじりながらご飯食べないのっ」 母がキッチンから顔を出し姉を怒る。 私はそれを横目に見ながらおでんに手をつけた。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

156人が本棚に入れています
本棚に追加