エルアーク:荒涼の船尾

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ

エルアーク:荒涼の船尾

 この箱舟は、エルアーク──つまり救いの船が基盤となっている中央の大島と、そこから空中水路で結ばれた小島八つの計九島で構成されている。  小島は船の前部から一つ、左右の側部から後部にかけて七つ浮かんでおり、エリシアはその内の一つ、後部から伸びる島へと足を向けた。  空中水路を渡り、島を覆い尽くす森の中を暫く進んでいると、木々の向こうに石畳の白色がちらりと見えた。あそこが箱舟の住人の一人、巨漢の竜人“鬼腕”の居所だ。      ***  [画像] 「エリシアか」  森の中に設けられた石畳。その上で一人座していた鬼腕が、傍へとやってきたエリシアの気配を感じて立ち上がる。 「ここへ来たという事は、自分に教えを乞いに──修練に来たか?」  最初、鬼腕と出会ったとき、そんな話があった。まだ箱舟へとやってきて間も無い自分に、原理述と呼ばれる力について教えてやる、と。 「他の者に教授することは、己の知識、力を確かめる事にも繋がる。自分にとっても良い機会だ。お前が望むなら、今すぐにでも自分が持つ単書の中へとお前を誘い、相応なる指導、相応なる敵を用意してやるが」  鬼腕は腰の裏に吊り下げていた本──恐らくは彼の所有する単書を取り出して、エリシアを見下ろしつつそう訊ねてくるが。  さて、どうしよう? ─End of Scene─image=337271951.jpg
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!