0人が本棚に入れています
本棚に追加
エルアーク:荒涼の船尾
この箱舟は、エルアーク──つまり救いの船が基盤となっている中央の大島と、そこから空中水路で結ばれた小島八つの計九島で構成されている。
小島は船の前部から一つ、左右の側部から後部にかけて七つ浮かんでおり、エリシアはその内の一つ、後部から伸びる島へと足を向けた。
空中水路を渡り、島を覆い尽くす森の中を暫く進んでいると、木々の向こうに石畳の白色がちらりと見えた。あそこが箱舟の住人の一人、巨漢の竜人“鬼腕”の居所だ。
***
[画像]
「エリシアか」
森の中に設けられた石畳。その上で一人座していた鬼腕が、傍へとやってきたエリシアの気配を感じて立ち上がる。
「ここへ来たという事は、自分に教えを乞いに──修練に来たか?」
最初、鬼腕と出会ったとき、そんな話があった。まだ箱舟へとやってきて間も無い自分に、原理述と呼ばれる力について教えてやる、と。
「他の者に教授することは、己の知識、力を確かめる事にも繋がる。自分にとっても良い機会だ。お前が望むなら、今すぐにでも自分が持つ単書の中へとお前を誘い、相応なる指導、相応なる敵を用意してやるが」
鬼腕は腰の裏に吊り下げていた本──恐らくは彼の所有する単書を取り出して、エリシアを見下ろしつつそう訊ねてくるが。
さて、どうしよう?
─End of Scene─
最初のコメントを投稿しよう!